プロティアンキャリアとはアメリカ心理学者であるダグラス・ホール (Douglas T. Hall) が提唱したキャリア理論であり、変化の激しい現在では、完全依存的でも完全独立的でもない、相互依存的な関係の中でキャリアを築いていくべきと主張しており、この理論を 「変幻自在なキャリア(Protean Career) 」 と名付けています。
皆さんが既にお気づきの通り、就業構造改革によって昔の「帰属社会」から「契約社会」になり、従来の心理的契約に代わる新しい心理的契約を定義しています。
基本的には:
・ 従来の長期にわたる会社への帰属的な関係契約とは異なり、個人と会社の間の貢献と利益による短期的な契約の連続。
・ 組織内キャリアから個人の仕事における心理的成功を目指す自己志向的なキャリア。
つまり、プロティアン・キャリアとは組織によってではなく個人によって形成されるものであり、キャリアを営むその人の欲求に見合うようにその都度方向転換されるものである (Hall, 1976) と言うことで、自己志向的に変幻自在に対応していくキャリアとも言えます。
特徴としては:
・ キャリアは組織によってではなく、個人によって管理される。
・ キャリアの目標は個人の心理的成功である。
プロティアン・キャリアの特徴を明確に理解するために、下記の従来の伝統的なキャリアとの比較をご覧ください。
プロティアン・キャリアと伝統的キャリアの対応表 (Hall, 2002)
項目 |
プロティアン・キャリア |
伝統的キャリア |
主体者 |
個人 |
組織 |
価値観 |
自由、成長 |
昇進、権力 |
移動頻度 |
高い |
低い |
尺度 |
心理的成功 |
地位、給料 |
姿勢 |
仕事満足感 専門的コミットメント 自分を尊敬できるか |
組織コミットメント 組織から自分は尊敬されているか |
アイデンティティ |
自分は何がしたいのか? (自己への気づき) |
自分は何をすべきか? (組織への気づき) |
アダプタビリティ |
市場価値: 仕事関連の柔軟性 市場へのコンピテンシー |
組織で生き残る: 組織関連の柔軟性 組織内でのサバイバル |
ご覧の通り、かなり明確に個人主体のキャリアの定義が見えると思います。そこで、どのようにしたらプロティアン・キャリアを構築できるのでしょうか?
ホールは重要な二つのコンピテンシーを打ち出しています。
・ アイデンティティ (Identity):自分が自分をどのように見ているか。価値観、趣味、能力、一生を通した自己概念。
・ アダプタビリティー (Adaptability):変化への適応スキルと適応モチベーション。
ダグラス・ホール(Douglas T. Hall)
1966年にMITスローン・スクールにおいて博士号を取得。現在はボストン大学マネージメント・スクールにおいて組織行動の教授とExecutive Development Round TableのDirectorを務める。アメリカ心理学会(APA)のギゼリ賞受賞。著書に “Career in Organization”, “The Career is Dead: Long Live the Career”等がある。
「計画的偶発偶発性理論 (Planned Happenstance)」はこちら
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